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詳細記載 (8): キセノン135/133比の検討

(1号機と3号機の放射能を識別できるか?)
次のグラフは3月12日から15日までの郡山局の線量率変化を示す。前回検討したように、1号機のベント排気の流れは郡山の西へそれ、建屋爆発で放出された放射能が飛来した。
グラフが示すように、爆発後も放射能の飛来は何度もあり、線量率の大きな変動を繰り返した。その多くは爆発で壊れた1号機の建屋から放出されたものであると考えられる。しかし、13日午前中からは3号機のベントが始まっており、3号機からの核種を特定して原子炉の状態を知るためには、1号機の放射能と識別しなければならない。
これが3号機のベント排気だろうという見当はだいたいついたのだが、確証は無く、見分ける決め手に欠いて、行き詰った状態となっていた。
801_kooriyama_312-15.jpg
なお、図には「3号機ベント」の表示があるが、これは後述するような検討の結果明らかになったもので、当初は分からない状態であった。

(Xe-135とXe-133のピーク比に注目)
スペクトル・データを見なおしている時、Xe-135のピークが3月13日になってもあまり低くなっていないことに気付いた。そのスペクトルが次の図である。
802_mukaihata_313-08h_sp.jpg
次の図は、3月12日早朝と13日朝のスペクトルを比べるために並べたものである。両者の時間差は28時間。Xe-135の半減期9.14時間の3倍強であり、2分の1の3乗、すなわち8分の1に減衰しているはずなのに、Xe-133(半減期5.243日)との比において、半分も減っていない。
これはおそらく1号機の再臨界によるものと思われるが、とにかく135/133比を全部調べてみることにした。
803_xe133-135_2st-hikaku.jpg

(シンチレーション・カウンターのエネルギー特性)
Xe-135とXe-133のピーク比を調べる上で、NaI(Tl)シンチレーション・カウンターのエネルギー特性について検討した。次の図は携帯用のサーベイメータのエネルギー特性を示す。このようにシンチの場合、100keV強を頂点とした左に片寄った山型のレスポンスになる。
Xe-133は81keV、Xe-135は250keVで、Xe-133の方が山の頂点に近く、レスポンスが大きくなる。これを補正しガンマ線の放出比で放射能比を計算できないかと考えたが、実際のモニタリング・ポストの正確な特性が分からないので断念した。
エネルギー特性についての補正はせず、そのままのピーク比でも意味はあると考え直した。
804_ene-response.jpg
ただし、放射能飛来の初期のデータは自然バックグラウンドを差し引いて補正した。また、残留放射能があるところに新たに放射能が飛来した場合、その前の、あるいは場合によってはその後のスペクトルを差し引いてピーク比を求めた。
この方法は、残留放射能の減衰を考慮していないので正確ではない。特に半減期の短いI-132(半減期2.3時間)の減衰により、スペクトル全域が少しずつ低下する。これはI-132が低エネルギーから高エネルギーまで多数のガンマ線を放出するためである。また、測定器から離れた場所からの放射線が空気中でのコンプトン散乱で低エネルギー側に寄ったものの影響も考えられる。
従って、残留放射能が存在する場合のキセノンのピーク比は、厳密に言うと、正確には求められない。しかし、これは実際にやってみての結果論ではあるが、このようなやり方で求めたピーク比でも、一定の意味を有していると考えられる。

(Xe135/Xe133ピーク比の変化)
Xe-135とXe-133のピーク比は、8局から85件が求められた。Xe-135のピークは3月14日5時まで確認された。
結果は次のようなグラフになった。
805_Xe135-133_ratio.jpg
大半のデータは12日には明瞭な減少傾向が認められず、13日午前1時まで高いピーク比を保ち、その後Xe-135とXe-133の放射能比である半減期9.9時間と整合するように減少している。これは1号機由来のキセノンであり、少なくとも12日の深夜まで1号機の再臨界が続いていたことを示唆する。これまで12日の正午ごろまで再臨界が続いたと考えていたが、今回、再臨界の継続時間が、さらに長かったことが推定された。
一方、このメイン・グループよりピーク比が低い2つのデータ群が認められた。1つは12日早朝、もう1つは13日午後のグループである。
前者は結論から言うと、1号機からの最初のリークと推定された。
後者は3号機ベント(2回目)の排気であることが判明した。ベントのタイミングや風向きなどを総合的に検討した結果、間違いないと考えるに至った。これについては次々回に詳しく説明する予定である。
とにかく、ようやく1号機と3号機を識別するという今回の当初の課題が、意図しない形で達成された。それと共に別の検討課題も生じたのである。こういうのを瓢箪から駒というのだろうか。
今回は前者、12日早朝の低ピーク比グループについて検討した結果を紹介する。

(3月12日早朝の低キセノン・ピーク比データ群)
このデータ群は4局の計6件からなる。
例として、南台局のスペクトルを時間順に並べたものを次に示す。
806_minamidai_312_5-8h_spectr.jpg
Xe-135のピークに注目してご覧頂きたい。ピークが伸びてくる様子が分かる。5時台と6時台のものが低ピーク比グループに属する。
次のグラフは、3月12日の1号機ベント以前の各局の線量率変化を、北から南に1段づつずらして表示したもので、すでにアップしたものに加筆したものである。
12日5時ごろから7時ごろに各局で線量率の上昇が見られる。このうち第一原発の南から北西のモニタリング・ポストで記録されたものに低いキセノン・ピーク比が認められる。なお、図中の新山局はスペクトル・データが無いが、変化パターンが隣の郡山局と類似しているので、郡山局と同様に高ピーク比のグループに属すると推定した。
807_senryo_312_4-14_5st.jpg
低ピーク比グループの線量率変化の詳細を示したのが次の図である。この放射能が飛来した順は、夫沢、南台、山田、上羽鳥であることが分かる。
808_312_4-7_low-Xe135.jpg
次の地図は、この放射能の移動経路を推定したものである。夫沢から北西方向に移動したと考えられ、第一原発からダイレクトに飛来したものではない。
809_map_312am-Low-Xe135.jpg
全体の経路を推定したのが次の概念図である。12日の0時ごろに格納容器の圧力が急上昇したとみられるが、その時に最初のリークが始まったと思われる。
正門での観測では0:50から4:20までの間、弱い西風が吹いていた。これに流されて海側へ移動し、その後、南東風で陸側に戻ったものと思われる。第二原発では5:00には1.6m/sの南東風が観測されている。
外気へリークしてから観測点に到達するまでに時間がかかったため、その間にXe-135が減衰して、Xe-133に対する比率が低下したと考えられる。
810_low-Xe135-133_migration.jpg
政府事故調査報告書(中間報告、P.143)には、11日23:50ごろに格納容器(ドライウェル)の圧力が0.6MPa(abs)に上昇していたとの記述がある。一方、東電の事故調査報告書(P.121)には12日0時ごろドライウェルの圧力が600kPaを超えている可能性、となっている。また、東電の「1F1水位・圧力に関するパラメータ」(2011/6/13公表)ではドライウェルの圧力は1:05に0.6MPa(abs)となっている。
どれが正しいのか分からないが、12日の0時前後には1号機格納容器の圧力が異常に上昇したことは確かだと思われる。これは、原子炉圧力容器の急減圧に伴うものと思われる。圧力容器の逃がし安全弁が壊れ、高圧の蒸気が格納容器(圧力抑制室)に一気に流れ込んだと想像される(詳細記載(2)参照)。
詳細記載(3)の最後の部分で考察したように、ベントラインの弁の耐圧性能は充分ではなく、突然の圧力増加のためベントラインを通って外気へリークしたと考えられる。

(1号機の再臨界について)
次の図は、低キセノン・ピーク比のグループに属する3月12日5時の夫沢局のスペクトルである。Xe-135のピークは低いため肩状になっている。
注目すべきはKr-88(半減期2.84時間)とその娘のRb-88、およびXe-135m(半減期15.29分)と思われる高まりである。これら短寿命放射能の存在は再臨界を示唆する。
811_sp_312-5h_ottozawa.jpg
1号機が再臨界したのは明らかである。詳細記載(2)で考察したように、原子炉圧力容器の急減圧に伴い、制御棒が脱落して再臨界が始まったと考えられる。
これまでの考察を総合すると、1号機の再臨界は3月12日0時ごろから約24時間続いたと推定される。

以上
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