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詳細記載 (2):1号機の再臨界

(3月12日早朝の1号機からの放射能漏出)
3月12日午前4時ごろ、消防車による1号機への淡水注入が開始されるとともに、外気への放射能の漏出が始まった。その因果関係や漏出経路については、次回に考察することにし、ここでは放出された放射能について記述する。
第一原発では、MP-8で4:04から、正門付近で4:05に空間線量率が上昇し始めた。原発の北約3kmの双葉町郡山では、4:29に線量率が上昇をはじめ、4:40には1101.5nGy/h(1.1μSv/h)まで上昇、その後増減を繰り返し5:32には10018nGy/h(10μSv/h)に達した。
この期間、風は弱く、風速は0.5m/s以下であったが、放射能が襲来した4:30ごろだけは、1m/sを超える南東風が吹いた。この風に乗って、第一原発から放射能が流れてきて、郡山付近に滞留したと考えられる。4:00から10分間ほど放出された放射能が30分かけて3km移動したとすると、秒速1.67mとなり、上空の方が風が速いと考えると、だいたい辻褄があっている。
なお、郡山は双葉町内の地名であるが、郡山市と紛らわしいので、できるだけ「双葉町郡山」と記載するが、「郡山」単独で表記することもあるので、誤解なきよう願いたい。
01_kooriyama_312_4-8.jpg

双葉町郡山で3月12日早朝(4:30~7:00頃)に記録されたガンマ線スペクトル・データから、次の放射性核種が同定された。
Xe-133, 81keV (38%)
Xe-135, 250keV (90%); 608keV (2.9%)
Xe-135m, 526.6keV (80.5%)
Kr-88, 2392keV (34.6%)
(カッコ内のパーセンテージは放出比)
また、微弱で明瞭ではないが、次の核種も推定された。
I-132, 668keV (99%), 773keV (75.6%)
Rb-88, 1836keV (21.4%);Kr-88の娘元素
02_spec_kooriyama_312-04.jpg

この時期の放射能の特徴は、わずかに含まれるヨウ素を除き、気体状の放射能(キセノンとクリプトン)だということである。一旦上昇した線量率は、7:56には46nGy/hと、ほぼ放射能襲来前のレベルにまで低下しており、残留性の放射能がほとんど無かったことを物語っている。

(Xe-135mについて)
短寿命のキセノン135m(Xe-135m;半減期15.29分)が特定されたことは、特に説明を要する。Xe-135mのスペクトル(527keV)は、I-133の530keVと近いため、ピークの位置だけで特定することはできない。しかし、これより後に現れるヨウ素は、I-131、I-132、I-133のセットでピーク群が認められ、I-133だけ明瞭なピークが出ることは考えられない。また、前述のように、ほとんどが通過性(気体状)の放射能であると考えられることからもI-133ではないと考えられる。I-132と考えられるピークが認められるが、微弱であり、ヨウ素は含まれているものの、微量である。
Xe-135mのピーク(527keV)と、その隣のXe-135のピーク(608keV)を比べると、初めはXe-135mのピークの方が大きいが、次第に小さくなる。
03_spec10c_koori_430-510.jpg

2つのピークの高さを、厳密に測って、比べてみた。ピークの高さは、元のデータから通常時の平均値(3月11日のデータの平均)を引いたものを、5点移動平均して、スペクトル曲線の谷の部分を結んだバックグラウンドの線からの高さをピークの高さとした。
04_Xe-peak-ratio_setsumeizu.jpg

このピーク高の比を片対数グラフにプロットすると、4:40から5:50のデータが直線状に減少している。その回帰直線の傾斜は、半減期15.92分を示す。半減期15.29分のXe-135mと、半減期9.14時間のXe-135の比の半減期は15.72分と計算され、これと極めて近い数字であり、このスペクトルがXe-135mであるとことを明確に示している。
05_Xe-peak-ratio_kooriyama_j2.jpg

前述のように、この放射能は4:00頃に第一原発1号機から放出され、4:30頃に郡山付近に飛来し、滞留したものと考えられる。原発からの放出時刻を4:10として回帰直線から計算すると、ピーク比は13.17となる。各スペクトルの放出比(壊変時に放出される放射線の割合)から計算すると、Xe-135mとXe-135の放射能比は0.47と推定される。
Xe-135mは短寿命ではあるが、ヨウ素135(I-135;半減期6.57時間)の壊変によって、原子炉停止後も炉内で発生する。従って、その存在だけで再臨界が示唆されるものではない。
Xe-135mは、ウランの核分裂で直接生成されるものと、I-135の壊変で生成されるものの、二通りの生成過程がある。しかし、I-135壊変の16.4%しかXe-135mは生じず、その他は直接Xe-135になることと、I-135の半減期がXe-135mのそれに比べて長く、壊変(=娘元素の生成)が遅いことから、原子炉運転時のXe-135mの大部分は直接の核分裂生成物と考えられる。
06_I-135_decay-scheme.jpg

日本原子力研究開発機構が福島第一原発の放射能を計算し、公表している(福島第一原子力発電所の燃料組成評価、西原ほか、JAEA-Data/Code 2012-018)。それによると、原子炉停止時(3月11日15時頃)、1号機炉心にあったI-135は2.69E+9GBq、Xe-135mは6.04E+8GBq、Xe-135は1.05E+9GBqであった。これをもとに原子炉停止から13時間後のXe-135mとXe-135の比を計算すると、0.095となった。
上記のように、放出されたXe-135mのXe-135に対する比は0.47と推定され、計算値の約5倍となった。放出された時間を、保守的に10分後の4:20としても、放射能比は計算値の3倍以上大きい。これは、1号機が再臨界して、核分裂生成物として、かなりのXe-135mが生じたことを示すものである。

(Kr-88について)
2350keV付近のピークが何なのか、なかなか分からなかったが、クリプトン88(Kr-88;半減期2.84時間)の2392keV(放出比34.6%)と特定した。このピークは残留性ではないので、キセノンかクリプトンの核種であると推定し、可能性のある核種をすべて検討した結果、Kr-88以外にはないと考えた。これだけ高いエネルギーのガンマ線を出す対象核種は、他にないのである。ピークの位置が少し低エネルギー側にずれているのはコンプトン効果の影響である。
I-132にもこれに近いピークがある。2223keV(0.118%)と2390keV(0.188%)であるが、カッコ内に示したように放出比が小さい。また、I-132には多数のピークがあるが、それらが確認されないことからも、I-132ではない。
なお、1800keV付近に見られる弱いピークは、Kr-88の壊変で生じるRb-88(半減期17.78分)の1836keV(21.4%)と推定した。

(1号機の再臨界)
このように、Xe-135mが多く認められたことと、原子炉停止から12時間以上経っても比較的半減期の短いKr-88が存在したことが再臨界の証拠である。Xe-135mは12日10時頃まで、Kr-88は12時頃までピークが認められ、かなりの時間、再臨界が続いたと思われる。
Xe-135mのピークは郡山以外にも、向畑と夫沢のデータで確認できる。Kr-88は、夫沢、山田、上羽鳥でも認められる。
07_spec_kooriyama_312-05.jpg
08_spec_kooriyama_312-06.jpg
09_spec_kooriyama_312-10-11_c.jpg
10_spec_kooriyama_312-12-13_c.jpg

3月11日から12日にかけての深夜に原子炉圧力が減少した。この時間帯の測定データは少ない。原子炉(圧力容器)の圧力は、11日20:07には6.90MPaだったが、12日2:45には0.80MPaに低下している。この間、原子炉水位は11日22:24に590mmだったのが、12日0:30には1300mmに上昇している。これは、減圧によるバブリングで見掛けの水位が上昇した結果と思われるが確かではない。いずれにせよ、日付の変わる頃に原子炉の圧力が低下したと考えられる。
減圧の操作は行なわれていないので、おそらく逃がし安全弁(SR弁)が壊れたと思われる。逃がし弁は、炉内の圧力上昇に伴い、何度も開閉を繰り返していたはずであり、ついに壊れて閉じなくなってしまったと思われる。
急減圧によって制御棒が一旦持ち上がり、コレット・フィンガーが外れて抜け落ちるという、北陸電力志賀原発で定期点検中に起こった即発臨界事故と同様のことが起こったと想像される。(北陸電力株式会社志賀原子力発電所1号機における平成11年の臨界事故及びその他の原子炉停止中の想定外の制御棒の引き抜け事象に関する調査報告書、平成19年4月20日、原子力安全・保安院)。
制御棒の脱落事故は、制御棒を原子炉圧力容器の下から出し入れする沸騰水型特有の事故であり、福島第一も含め、以前からかなりの件数が報告されていた。制御棒は、原子炉内の水圧を利用して、上げ下げできるようになっている。急に炉内の圧力が低下すると、制御棒が持ち上がって、制御棒を止める掛け金(コレット・フィンガー)が外れて、脱落事故に至るらしい。

以上
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