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詳細記載 (1):モニタリング・ポストについて

(第一原発敷地内のモニタリング・ポスト)
第一原発の敷地境界付近には8つのモニタリング・ポスト(以下MPと略記する)が設置されていた。北から反時計回りにMP-1~MP-8である。
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これら東電のMPは、地震による電源喪失で機能を停止した。海岸に近いものは津波の被害も受けた。
一方、原発敷地外に設置された福島県のMPも、地震と津波の影響を受けたが、津波で流出した4局を除き、非常用電源により一定期間のデータが保存されており、後日回収された。これについては後述する。
東電のMPは福島県のものと違い、非常用電源でデータが記録されるようにはなっていなかったのであろうか、敷地内MPのデータが回収されるということはなかった。そのあたりの事実関係は不明である。
東電は携帯用の測定器で空間線量率を計測したが、数地点での不定期な測定であり、モニタリングとしては極めて不完全なものであった。同時期に測定している地点は3点程度しかなく、正門だけでの測定期間も長い。
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ある地点の線量が上がった場合、その時に放射能の放出が始まったとは限らない。放出はずっと続いていたが、風向きが変わって、その地点に放射能が飛んできたというケースが多い。放射能の放出状況を知るためには、原発の周囲360度にMPが配置されていることが理想である。
そもそも既設のMPが機能していたとしても、陸側(西側)をカバーしているだけで、海側(東側)の測定点は無い。このため、放出された放射能が海側に流れても、それが観測されることはないのである。3号機建屋が爆発した時は西風が吹いており、直後に撮影された衛星画像には海側に流れる煙が写されていた。この時放出された放射能は、観測されること無く海上に流れ去った。
原発敷地内のデータだけから事故の経過を考察することは、明らかに無理である。それでも強引に事故解析を行なうと、誤った結論が導きだされてしまう。

(福島県のモニタリング・ポスト)
福島第一・第二原発の周辺に設置されていた福島県のモニタリング・ポスト(固定局)は全部で23局。沿岸部の南北約30kmに配置されていた。このうち4局は津波で流失した。データは大熊町大野にある福島県原子力センターにテレメーターで送信されていたが、地震による停電で、送信が途絶えた。そのため、これらが住民の避難に役立つことは無かった。
原発から60km以上離れた福島市の紅葉山公園にもモニタリング・ポストが設置されている。これは、原発の看視用というよりは、対照用としてのものだと思われる。つまり、核実験であるとか、福島原発とは別の原因で放射線量が上昇することを識別するのが目的と思われる。しかし、皮肉にも福島第一原発からの放射能襲来を記録することとなった。
地震の影響でデータ送信は途絶えたが、非常用電源が一定期間作動して、データをメモリーや紙チャートに記録していた。これらは福島県により回収され、2012年9月から2014年2月にかけて、順次公表された。ガンマ線スペクトルの生データは、2014年2月に公開された。
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東電の事故調査報告書は2012年6月、国会と政府の事故調査報告書は7月にそれぞれ公表された。福島県のMPデータは同年9月以降の公表であり、どの事故調にも反映されることは無かった。

(ガンマ線スペクトル・データについて)
低線量用のNaI(Tl)シンチレーション・カウンターに波高分析器(マルチ・チャネル・アナライザー)が付いていて、線量率だけでなく、ガンマ線スペクトルが記録されるものがある。福島県のMPの中で、紙チャートを使っている古いタイプのもの以外は、スペクトル・データが記録されていた。
公表されたスペクトルの生データは、1時間計測のものと10分間計測の2種類があるが、どちらもチャネル設定が記載されていない。同じ局の同じ時間帯のデータを比較すると、両者は少しズレたパターンを示す。設定の明らかな茨城県のデータを参考にすると、福島県の1時間データは、茨城県と同じチャネルあたり5keV幅の標準的な仕様であることが分かる。1時間データとの対比により、10分データのほうは、チャネル間隔が少し短いとともに、低エネルギー部分が欠落している変則的な設定になっていることが推定される。
双葉町郡山局の場合、10分データは、チャネル15から始まり、間隔は4.57keVと推定された。また、チャネル20までは値が低すぎて異常であり、81keVのXe-133のピークが見えていない。この設定は3月13日13時40分のデータまでは一定だが、それ以降はチャネル間隔が少し広くなっているようである。それもまた一定ではなく、少し変化しているようである。このように10分データは多少不安定であり、安定している1時間データとの注意深い比較の上で、核種の同定を行なう必要がある。
これを知らず、10分データを用いて誤った核種を同定する事例があった。例えば、250keVのXe-135を228keVのTe-132と誤認するなどである。
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なお、データの数値は6桁までしか記録できず、それ以上の桁になると桁落としされる。従って、カウントの高いデータをそのままグラフ化すると、ガタガタした形のグラフになって意味を成さない。

(コンプトン効果によるピーク・シフト)
当初、チャネルの間隔が分からなかったので、天然の放射線のピークで較正すればよいと考えた。Bi-214(609keV)、K-40(1461keV)、Tl-208(2615keV)の3つである。しかし、これらはコンプトン効果によって低いエネルギー側に少しずれていることに気付いた。すなわち空気を構成する原子の電子にガンマ線が当たって方向が変わると、変化する角度に応じて波長が長くなる(エネルギーが低くなる)。
K-40(1461keV)の場合、だいたい1425keVあたりにピークが現れる。このようなことを理解しないと、核種の同定を誤る可能性がある。
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(高線量時のスペクトル・グラフの平滑化)
線量が高いと、スペクトルのピークが消えて、つるっとしたグラフになる。それは、ガンマ線が多くなると処理時間が間に合わず、複数のガンマ線入射を1つのものと認識してしまい、それらの合計(サム)のエネルギーとしてカウントするからである。これはサム・ピークと呼ばれる。
普通、サム・ピークというのは、一つの原子の壊変でカスケード状(段滝状)にエネルギーレベルを下げる場合に、非常に短時間に2つのガンマ線が放出されるため、測定器では分離できず、2つを1つのものとして計測することを言うらしい。しかし、この場合は、余りにも線量が多いため、色々な核種や、同じ核種だが別の原子どうしのガンマ線が、ほぼ同時に測定器に入射するため起こるものと思われる。専門用語は知らないが、ランダム・サム・ピークと呼ぶのが適当かもしれない。
福島県のMPの場合、だいたい14μSv/h以上で、スペクトル(見かけ)の平滑化が認められる。そのような線量率は、福島事故においては珍しいものではなく、かなり多くのデータは意味のあるスペクトルを記録できていない。
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(データ時間の不統一)
2012年9月21日、福島県は東電福島第一・第二原発と連名で、原発周辺の事故時の空間線量データを公表した。この時公表された、双葉町上羽鳥(第一原発の北西5.6km)の1590マイクログレイ毎時という高い値はセンセーショナルであり、各紙で報道された。問題は、その時刻である。3月12日15時の値という発表あり、15時36分の1号機建屋爆発の影響なのかどうかが微妙であった。
その後公表された詳細データと比較すると、1時間データは表示時刻までの1時間の平均値であることが分かった。20秒値では、上羽鳥の最高は14時40分の4613.2マイクログレイで、これは、周辺で測定された値としては最も高いものであり、1号機建屋爆発の前のベント排気が異常に汚染されていたためであることが明らかになった。
一方、スペクトル・データの方は、表示時刻の積算値であり、15時の場合、15:00から16:00までの測定値である。空間線量率のデータとは1時間ずれているので、注意が必要である。

(空間線量率の単位について)
放射線の強さについて、線量当量率(シーベルト毎時;Sv/h)を使う場合と吸収線量率(グレイ毎時;Gy/h)で表示する場合がある。また、ミリ(m)、マイクロ(μ)、ナノ(n)という、それぞれ千分の一、百万分の一、十億分の一をあらわす記号が付けられ、まちまちである。
新聞などはマイクロ・シーベルト毎時で統一しているが、本ブログでは元データの表示を踏襲している。ただし、色々なソースのデータを一つの図表に表示する場合はマイクロ・シーベルト毎時(μSv/h)に統一した。

以上
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