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詳細記載 (18):雨か雪か:3月15~16日の3号機大量放出C(その2)

(大量放出Cの期間の風向変化)
前回述べたように、大量放出Cは、3月15日早朝から16日昼過ぎにかけての1日半に及んだ。その間の風向きは一定せず、まず北よりの風から時計回りに南よりの風に変わったが、その後こんどは逆時計回りで北風に戻り、北風が安定する時間帯がある。さらにその後に風向変化の激しい時期が続く。
このような風向きの変化から、大量放出Cを、だいたい次のような4つの期間に分けることができる。
(1) 時計回り期(C1-cw)15日6時~18時
(2) 反時計回り期(C2-acw)15日19時~16日0時
(3) 北風期(C3-n)16日0時~9時
(4) 風向不定期(C3-var)16日10時~16時
次の図は福島第二原発の風グラフに、この4つの期間を示したものである。
1801_2F_wind_315-16_p.jpg
前回は時計回り期について詳述した。
今回は主に反時計回り期(C2-acw)について検討する。

(風向変化に伴う線量率変化の例)
この時期に第一原発正門で測定された線量率のグラフを次に示す。正門は3号機の西南西に位置するので、東北東からの風が吹くと線量が上昇する。大量放出Bの後に放出Cの3つのピークが認められるが、これはワイパーのように変わる風向きが、東北東からの向きに3度なったからで、そのことは上掲の風グラフで確認できる。3号機からの放出自体は継続していたと考えられる。なお、大量放出Bはブーメランのように舞い戻ってきたものなので、風向との連関は無い。
放出Cの3つのピークは、いずれも線量率の急上昇があり、その後に残留放射能の減衰(主にヨウ素132)を示す減衰曲線が続くパターンとなっている。
1802_1F-seimon_314-16.jpg
次は、3号機と正門を結ぶ直線の延長上にある大野局の線量率変化である。正門と同じようなパターンとタイミングであり、東北東の風に乗って放射能が飛来したことが明瞭である。
1803_oono_314-316.jpg
正門と似たパターンであるが、C2-acwのピーク後の低下が小さく、高止まりしている。これは降水に関係する現象であると思われ、今回の後段で考察する。
次は、第一原発の西北西4.1kmに位置する山田局の線量率グラフである。時計回り期と反時計回り期の間にピークが認められるが、これは一時的に東風となったことに対応している。
1804_yamada_315-316.jpg
第一原発から南側の沿岸部の例として、第二原発の線量率グラフを示す。ここでは北よりの風が吹いた北風期(C3-n)と風向不定期(C4-var)にピークが見られる。
1805_2F_314-316_c.jpg

(反時計回り期の概要)
次の地図は反時計回り期の概要を表わしたものである。3月15日19時から21時ごろには南風により放射能が沿岸部を北上した。次いで22時ごろには北西方向の請戸川ルートに移る。その後、西方向の国道288号線ルート、南西方向の川内村ルートを短時間通り、16日2時ごろには北風で沿岸部を南下するルートとなった。
1806_map_coast_315_18h-.jpg

(浜通り北上ルート)
第一原発の北約24kmの南相馬では、15日18:10から線量が上がり始め、19:30に4.96μSv/h、22:10に5.15μSv/hのダブルピークとなった。また、第一原発の北北西8.6kmの浪江では、19:20から上昇し、20:27にピークの19.8μSv/hが記録された。
原発から遠い南相馬の方が先に線量が上昇したが、これは風の流れ方が不連続的であるためと思われる。

(請戸川ルート)
北上ルートの後、阿武隈越え3ルートを北から順に移っていった。
請戸川ルートの飯舘では15日21:00から線量が上昇し、23:00にピークの38.8μSv/hとなった。福島市では22:50から線量が上昇し、23:20にピークの17.3μSv/hとなった。これらは反時計回り期のものと考えられる。
一般に原発から北西方向の汚染地帯として知られる請戸川ルートは、先行する時計回り期のみが重要視され、後続の反時計回り期は軽視されている、あるいは認識すらされていないと思われる。しかし、反時計回り期も加わって、汚染地帯形成を決定づけたと考えられる。これについては、降雪との関係が重要であり、今回の後段で考察する。

(288号線ルート)
原発から西方向の国道288線沿いのルートに近い双葉町山田局で15日23:12に126μSv/hのピーク線量率を記録し、大熊町大野局では16日0:11に251μSv/hという高い線量率が測定された。
しかし、山を越えた田村市では16日2:00に僅かな線量上昇が観測されただけであり、この時の288号線ルート山越えは小規模であったと思われる。

(川内村ルート)
川内村では16日1時から線量が上がり始め、2時に割山トンネル出口で18μSv/hのピークが測定されたが、これは時計回り期のピークに比べると小さいものである。
反時計回り期においては、風向の変化が一定ではなく、短時間で東風から北風に回った。このため、西方向の288号線ルートと南西の川内村ルートへの飛来が少なかったと考えられる。これは、冒頭の風グラフで確認できる。
1807_kawauchi-mura_314-317.jpg

(降水の影響)
次に示すグラフは大野局の線量率変化グラフに、気温、湿度、降水量を加えた複合グラフである。福島県設置のモニタリング・ポストのうち、大野局だけが、このような気象用の観測装置が設置されており、データが測定・記録された。放射能の地表への残留と降水の関係を考察する上で、非常に重要なデータである。
1808_oono_meteo_314-16.jpg
このグラフを見ると、ピーク線量率は時計回り期(C1-cw)が最も高いのだが、残留放射能による線量率は、反時計回り期(C2-acw)の方が一桁高い。このパターンの違いは、湿度や降水量の違いと関係するらしいということが、グラフから読み取れる。
大量放出Bと時計回り期(C1-cw)のパターンは似ており、放射能通過後の残留時の減衰が明瞭である。これは半減期が約2.3時間と短いヨウ素132の関与が大きい。ヨウ素132の親元素であるテルル132(半減期3.2日)と分離されて地表に定着したと考えられる。もし両者が放射平衡の状態にあれば、このように急速な減衰はありえない。
感覚的な表現であるが、ヨウ素はベタベタ、テルルはサラサラと考えると両者の分離が理解できる。
一方、反時計回り期(C2-acw)のピーク後のパターンは減衰が小さいので、テルル132も地表に沈着したと考えられる。この時期、15日深夜から16日早朝には降水があり、降水によって粒子状放射能であるテルルも地表に降下したと思われる。ということは、同じ粒子状放射能であるセシウムも地表に付着したと思われる。
放射能飛来時の降水の有無で、残留放射能の量が大きく異なることは明らかである。
あらためて、3号機から見て同じ方向にある正門と大野局の線量率変化パターンを比較するために、両者を同じグラフ上に表示したものが次の図である。
1809_1F-seimon_oono_314-16.jpg
両者のピーク後の減衰パターンを比べると、BとC1-cwはよく似ているが、C2-acwとC4-varは大野局の線量率低下が小さいパターンとなっている。上記のように、これは降水の影響と思われるが、ということは、第一原発では15日深夜~16日朝に降水が無かったということになる。わずか数キロ離れた場所の天候が違っていたようである。この時、海に面した第一原発では雨も雪も降らなかったと思われる。
[追記]16日6:00の第一原発ライブカメラ映像にはレンズに付いた水滴が写っている。同日早朝に降雨があった証拠であり、前の記載は正確ではない。ただし、正門付近に放射能が流れた深夜の時間帯には、第一原発では雨も雪も降らなかったと推定される。[追記終わり、2017/3/11]

(雨か雪か)
さて、ここからは「降水」の詳細について考えていく。
雨だろうが雪だろうが、空中に浮遊する放射能を地表に降下させることに変わりは無いので、今回の記載・考察の途中までは、雨も雪も大差ないだろうと思っていた。しかし、検討を進めるうちに、その考えが甘いと思うようになった。

(大野局)
次のグラフは上掲の大野局の降水時前後の拡大図である。
降水の最初期には線量率の低下が認められる。これは雨水が、すでに汚染されていた地表を遮蔽したためと考えられる。雨が空中の放射能を大量に地表に降下させた、とは一概に言えないようである。
その後気温が低下し、おそらく降雪に伴って線量率が上昇し、ピーク後の残留放射能による線量率も一桁上昇した。
1810_oono_meteo_315-16.jpg
地上の気温が何度だと雪になるか?ネットで色々調べたが、地上の温度の目安として、2℃だったり3℃、4℃だったりする。これらは、だいたい首都圏で雪が降るかどうかの目安であり、地域や上空の気象条件によっても一定しないものであろう。
大野局では、15日23:50に3.6℃だったが、20分後の16日0:10には2.2℃までガクンと気温が低下した。これはグラフのパターンで確認できる。おそらく降雪に伴う気温低下と思われるが、これと同時に線量率が上昇している。雪とともに放射能が降下した可能性が高い。

(飯舘村)
次の図は飯舘村の線量率と気温・降水量の複合グラフである。線量率は福島県の測定、気象データは気象庁のアメダスである。福島県内の多くのアメダス観測点は震災に伴い欠測となったが、飯舘村の観測点は生きていた。阿武隈山地における「請戸川ルート」で唯一の観測点であり、汚染地帯形成について考える上で貴重なデータである。
1811_iitatemura.jpg
最初の線量率ピークは時計回り期(C1-cw)、次のピークは反時計回り期(C2-acw)のものである。気温は最初のピークの時に2℃を切り、次のピークの時には0℃に近づいた。その後16日早朝には氷点下となった。
飯舘村に設置されていたアメダスの無人観測装置では、雨か雪かの区別はできず、単に「降水量」として記録されている。実際に降ったのが雨なのか雪なのかは分からない。
この北西方向に伸びる汚染地帯形成についての記述を調べると、「小雨」、「雨や雪」、「降雪」、「雨、みぞれ、雪」など様々である。これらは実際に現地にいた人の記述ではなく、専門家が書いた文章中の言葉である。
実際に現地におられた方の目撃情報が無いか調べてみたが、ネット上で見つけることはできなかった。震災・事故発生後、数日しか経っておらず、天候を気にする余裕は無かったと思われるし、2つ目の線量ピークは深夜であった。また、飯舘村の時間降水量は最大で1.5mmであり、大雨や大雪なら記憶に残るが、気にするような降りかたではなかった。
気温データから推量すると、線量率ピーク時に降ったのは、みぞれから雪であったと思われる。特に第2ピーク(反時計回り期)は雪で間違いないと考えられる。

(福島市)
請戸川ルートで山越えし、中通りに到達した放射能による線量率の上昇は、福島市の紅葉山にあるモニタリング・ポストで記録された。また気象データは福島地方気象台の観測があり、目視による降雨・降雪などの観測情報も公表されている。
福島市では15日13時に弱い雨が降り始め、16日0時から3時過ぎまで雪が降った。その後は雨やみぞれとなる。雨から雪に変わったときの気温は0.7℃であった。
線量率は15日14:20に上昇が始まり、16:30ごろに急上昇してプラトーとなった。その後22:50に再び上昇し、23:50にピークに達した。次のグラフのように、最初の上昇は時計回り期(C1-cw)に対応し、次のピークが反時計回り期(C2-acw)に当たる。
1812_momijiyama_315-16_prc_temp.jpg
C2-acwの線量率上昇は、気温の低下とシンクロしており、雨から雪に変わるタイミングは少し遅れるものの、ほぼ降雪に伴うものと考えられる。
原発から北西方向に伸びる汚染地帯は、単に「降水」との関係を指摘するだけでなく、雨と雪の違いについても考察する必要があると思われる。
1813_airborne_20110429.jpg

(仙台市)
仙台でも降水に伴う線量上昇が3月15日深夜に認められる。12日と13日のピークと異なり、残留性が顕著であることから、粒子状の放射能が降下したものと考えられる。この放射能が、いつ、どの原子炉で発生したものか不明であるが、時間的に3号機の大量放出Cではなく、大量放出Bか、1号機ベント排気が滞留したものの可能性が考えられる。
1814_sendai_tohoku-univ-hosp_c.jpg
仙台管区気象台のデータによると、15日9:30から弱い雨となり、23:00からみぞれ、23:20から雪となった。降雪に伴い。気温もガクンと低下した。線量率は13時ごろから徐々に上昇したということであるが、24時のピークは雪の降り初めと同期している。雨よりも雪の方が空中の放射能を多く集めて降下させると考えられる。
1815_sendai-315-16.jpg

(雨と雪で違う理由)
上空で雪ができて降下する途中で溶けて雨になるケースと、雪のままで降るケースを考える。もし上空に粒子状放射能があり、雪の結晶の凝結核になったり、雪に付着した場合(下図の左)、降下の途中で溶けて雨になろうが、雪のままだろうが、地表に降下する放射能の量は同じはずである。ところが、雲の下の地表付近に放射能が漂っている場合(下図の右)、雨と雪では放射能を付着して集める能力に違いがあると思われる。
これまで検討したように、雨と雪には違いがあると思われるので、後者のような状態が考えられる。
1816_snow-rain_c.jpg
雨滴と雪の結晶では表面積が大きく異なる。また、降下速度が異なるため放射能と接触する時間が違ってくる。このため、雪の方が多くの粒子状放射能を付着して地表に降下させ、より深刻な汚染地帯を形成したと考えられる。

以上
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